俳人名鑑

 望月 周 (もちづき しゅう)

 昭和40年(1965)東京都生れ。 「百鳥」

 大串章に師事。平成10年「百鳥」入会。同人、編集長をつとめる。平成14年百鳥賞・第56回角川俳句賞・第38回俳人協会新人賞受賞。

 句集:『白月』

     九官鳥同志は無口うららけし

     遠火事の百年燃えてゐるごとし

     灰には雪雪には灰の積りつつ

 

本井 英 (もとい えい)

 昭和20年(1945) 埼玉県生れ。神奈川県在住。 「夏潮」主宰・「珊」

 清崎敏郎に師事。のち星野立子、高木晴子に学ぶ。俳句は高校時代から」敏郎に師事。「珊」同人、「惜春」副主宰を経て平成19年虚子の文学を敬し慕うことを標榜する「夏潮」を創刊主宰。令和元年第二十三世鴫立庵庵主に就任。第32回俳人協会評論賞受賞。

 句集:『本井英句集』『夏潮』『八月』『開落去来』『二十三世』 著作:『虚子 渡仏日記紀行』『高浜虚子』

      息の音のさよならさよなら夜は短か

      妻知らぬセーターを着て町歩く

      笹子来てをるよと告げむ人もがな

 

本宮哲郎 (もとみや てつろう)

 昭和5年(1930)〜平成25年(2013)83歳。 新潟県生れ。 「河」「麓」

 飯田蛇笏、龍太に師事。昭和23年「雲母」入会。中断後「河」「麓」同人。第1回俳句研究賞・第40回俳人協会賞受賞。

 句集:『雪嶺』『信濃川』『日本海』『伊夜日子』

     野を焼きしその夜の妻は裸で寝る

     葱深く伏せて雪くる信濃川

     田を植ゑて父に逢ひたくなりにけり

     さらさらと雪あかときのひめ始

     花冷えの田より抜きたる足二本

 

森賀まり (もりが まり)

 昭和35年(1960) 愛媛県生れ。大阪府在住。 「百鳥」「静かな場所」

 夫は田中裕明。昭和58年「青」に入会。のち「百鳥」同人。「静かな場所」代表。第1回百鳥賞・第33回俳人協会新人賞・第62回俳人協会賞受賞。

 句集:『ねむる手』『瞬く』『しみづあたたかをふくむ』

    かすかなる空耳なれどあたたかし

    瞬きに月の光のさし入りぬ

    合歓の花不在の椅子のこちら向く

    鬼灯やあげとうと言ひくれざりき

    白桃や過去のよき日のみな晴れて

 

森川麗子 (もりかわ れいこ)

 昭和6年(1931) 福井県生れ。京都府在住。  「豈」

 西東三鬼に師事。「面」「激流」「琴座」「白燕」等を経て「豈」 同人。  

 句集:『禁猟区』『葡萄樹下』『草上』『梨冠』『葵抄』『森川麗子句集』『白日』

      白牡丹悍馬の尾には触れもせず

      過ちの深秋金襴緞子かな

      古代魚に胸まで合わす春の暮

      田が立ちぬ畑が立ちぬ更衣

      椿の夜中二階にてさわぎたり

 

森 澄雄 (もり すみお)

 大正8年(1919)〜平成22年(2010)91歳。 兵庫県生れ。東京都在住。  「杉」主宰

 加藤楸邨に師事。波郷に私淑。昭和15年「寒雷」創刊とともに入会。昭和25年同人.永く編集長を務めた。人間探求派を超えることを目標に昭和45年「杉」創刊主宰。第1回寒雷暖響賞・第29回読売文学賞・第21回蛇笏賞・日本芸術院賞・恩賜賞・第40回毎日芸術賞受賞。日本芸術院会員・平成17年文化功労者。※旧制長崎高商・九州帝大法文学部経済学科出身

 句集:『雪櫟』『花眼』『浮鴎』『鯉素』『游方』『空艪』『四遠』『所生』『余日』『白小』『花問』『天日』『虚心』『深泉』『蒼茫
』  著作:『森澄雄俳論集』『俳句燦々』『森澄雄全集』(全五巻)ほか

     除夜の妻白鳥のごと湯浴みをり

     磧にて白桃むけば水過ぎゆく

     餅焼くやちちははの闇そこにあり

     秋の淡海(あふみ)かすみ誰にもたよりせず

     白をもて一つ年とる浮鷗

     ぼうたんの百のゆるるは湯のやうに

     西国の畦曼珠沙華曼珠沙華

     ふり出して雪ふりしきる山つばき

     はるかまで旅してゐたり昼寝覚

     妻がゐて夜長を言へりさう思ふ

     木の実のごとき臍もちき死なしめき

     妻亡くて道に出てをり春の暮

 

森下草城子 (もりした そうじょうし)

 昭和6年(1931)〜平成30年(2018)87歳。 愛知県生れ。 「木」「海程」

 太田鴻村、金子兜太に師事。昭和28年萩原井泉水の「層雲」、昭和29年太田鴻村の「林苑」入会、30年内藤吐天の「早蕨」に同人参加。41年金子兜太の「海程」入会。のち同人。「木」代表。現代俳句協会顧問。昭和46年中部日本俳句作家会賞・第1回新俳句人連盟賞・第10回海程賞・第48回現代俳句協会賞受賞。

 

 句集:『風炎』生家』『野鯉』『森下草城子句集』

     少年白シャツ空の青さで馬みがかれ

     むかし放蕩青梅を叩くかな

     父の田の冬がぼんやり立っている

     雑木林の発熱の馬目を開けて

     芹の水を真昼出てゆく青年僧

 

森田 峠 (もりた とうげ)

 大正13年(1924)〜平成25年(2013)88歳。 大阪府生れ。兵庫県在住。 「かつらぎ」名誉主宰

 阿波野青畝に師事。昭和17年「ホトトギス」に初   投句歳。。虚子を訪ね峠の俳号をもらう。昭和26年阿波野青畝の「かつらぎ」に入会。編集長、雑詠選者,を経て平成2年より主宰を継承。平成25年5月名誉主宰に。俳人協会顧問。第26回俳人協会賞・第19回詩歌文学館賞受賞。※國學院大學国文科出身。

 句集:『避暑散歩』『三角屋根』『逆瀬川』『雪紋』『牧開』『葛の崖』『四阿』『甲山』『朴の木山荘』『森田峠全句集』 著作:『青畝句集『万両』全釈』ほか    

      冬空やキリンは青き草くはへ

      箱河豚の鰭は東西南北に

      教会と枯木ペン画のごときかな

      かんじきを最も戸口近く吊る

      しぼりゆく鯛網ふるへはじめけり

 

森田智子 (もりた ともこ)

 昭和13年(1938) 大阪府生れ。 「樫」代表

 西東三鬼、鈴木六林男に師事。昭和32年三鬼の「断崖」に参加、のち「天狼」などを経て昭和46年「花曜」同人。平成2年同人誌「樫」創刊。第1回花曜賞・第29回現代俳句協会賞・第11回鬣TATEGAMI俳句賞受賞。

 句集:『全景』『中景』『掌景』『定景』『今景』

      新緑もビルも流れて子を産みに

      パリモスクワニューヨーク晴梅雨の入

      人間を見ている駱駝夏休み

      八月の裏向いている卸金

      長い目で見れば田螺が転んだだけ

 

森田 廣(もりた ひろし)

 大正15年(1926)〜令和5年(2023)96歳。 島根県生れ。 「ひこばえ」

 福島小蕾の「俳句地帯」の同人。改称した「地帯」の主幹を務めた。同誌終刊後「ひこばえ」同人。句歴70年、島根県現代俳句協会会長を歴任。第19回鬣TATEGAMI俳句賞受賞。画家。

 句集:句画集『出雲、うちなるトポスT〜V』3巻 『樹』『樹を遡る』

    雲中にはためく弔旗ななかまど

    砂丘いま揚羽の終の快楽かな

    上がり框でとんぼを切りし春の沖

    四方霞み野姥は川をひらきあう

 

森田緑郎 (もりた ろくろう)

 昭和7年(1932) 神奈川県生れ。 「海程」

 金子兜太に師事。昭和37年「海程」に参加.編集同人。第5回海程賞受賞。

 句集:『花冠』『藍納戸』『森田緑郎句集』

     菜の花畑扉一枚飛んでいる

     ラグビー了えシャワーの如き愛語降らす

     巻舌の濤の暗黒鰤起し

 

守屋明俊(もりや あきとし)

 昭和25年(1950) 長野県生れ。東京都在住。 「閏」代表。

 鍵和田秞子に師事。昭和61年「未来図」に入会。編集長を務めた。令和3年同人誌「閏」創刊代表。平成14年未来図賞受賞。

 句集:『西日家族』『蓬生』『日暮れ鳥』『象潟食堂』

     年寄に持たすと乱射水鉄砲

     剣劇の借景の柿落ちにけり

     天と地の天まだ勝る秋の蝉

     厚からむいとしこいしの大阪は

  

 

諸角せつ子 (もろずみ せつこ)

 昭和6年(1931)〜令和2年(2020)89歳。奈川県生れ。 「道標主宰

加藤楸邨に師事。 「水鳥」「寒雷」「海程」同人。「道標」の主力同人として活躍。。古澤太穂のあと主宰を継承。平成29年まで主宰を務めた。横浜俳話会、横浜文芸懇話会の各会長を歴任。神奈川県の文藝振興に尽力した。

 句集:『荒踊り』『網膜の花』『権太坂』

    おわら盆唄胡弓ひとつは荒踊り

    月のよわい猫のよわいと権太坂

    蘇州夕焼うすくれないは日本語

 




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