俳人名鑑

武藤紀子　（むとう　のりこ）

　昭和２４年（１９４９）　石川県生れ。愛知県在住。　　「円座」主宰

　宇佐美魚目に師事。｢晨｣｢古志｣同人。平成２３年「円座」創刊、主宰。

　句集：『円座』『朱夏』『百千鳥』『冬干潟』

　　　　　　斑猫の消えしと見ればふえてをり

　　　　　　蚕豆は昔の顔をしてゐたる

　　　　　　フランスの国のかたちの枯葉かな

　　　　　　昼寝覚柳になつてゐたりしが

村井和一　（むらい　かずいち）

　昭和６年（１９３１）〜平成23年（２０１１）７９歳。　東京都生れ。　｢西北の森｣

　幡谷東吾に師事。元｢花実｣同人。現代俳句協会副会長。※早稲田大学国文学科及び政経学部経済学科出身。

　句集：『洪笑美族』『未然』『敗北主義・正編』『もてなし』　　著作：『修羅の座標』

　　　　　軒が沈んでつごもりつごもる膝がしら

　　　　　桜散る個々に無数に社員踊り

　　　　　退屈の果てに蒟蒻押してみる

　　　　　雄鶏の一歩あゆめば九十九里

　　　　　海ゆかば西瓜の種の飛距離かな

村上鬼城　（むらかみ　きじょう）

　慶応元年（１８６５）〜昭和１３年（１９３８）７３歳。　東京生れ。群馬県在住。

 　ホトトギス虚子選雑詠で計１２回の巻頭を得る。虚子は『古今独歩の人』，大須賀乙字は『明治大正俳壇の第一人者』と、また蛇笏は『当代第一の作家』と評し、なかでも乙字が最も高い評価をした。※明治義塾法律学校に学ぶ。

　句集：『定本鬼城全句集』　　著作：『村上鬼城全集全３巻』

　　　　　治聾酒の酔ふほどもなくさめにけり

　　　　　夏草に這りたる捨蚕かな

　　　　　闘鶏の眼つぶれて飼はれけり

　　　　　冬蜂の死にどころなく歩きけり

　　　　　野分すや吹き出されして亀一つ

　　　　　小春日や石を噛み居る赤蜻蛉

　　　　　今日の月馬も夜道を好みけり

　　　　　榛名山大霞して真昼かな　

　　　　　五月雨や起き上がりたる根無草

　　　　　ゆさゆさと大枝ゆるる桜かな

村上喜代子　（むらかみ　きよこ）

　昭和18年（１９４３）　山口県生れ。千葉県在住。　｢いには｣主宰

　大野林火に師事。昭和51年｢濱｣入会、のち同人。平成6年大串章の｢百鳥｣創刊に参加。編集同人。平成17年｢いには｣創刊。第15回俳人協会新人賞受賞。

　句集：『雪降れ降れ』『つくづくし』『八十島』『村上喜代子集』『間紙』『軌道』　　　　　　

　　　　　　美しき生いたちを子に雪降れ降れ

　　　　　　鳴きだして重くなりたる虫の籠

　　　　　　間紙（あいがみ）のうすむらさきも雛の頃

　　　　　　彗星の軌道のやうな寒卵

村上鞆彦　（むらかみ　ともひこ）

　昭和５４年（１９７９）　大分県生れ。　東京都在住。　「南風」主宰

　鷲谷七菜子、山上樹実雄に師事。平成１０年「南風」入会。編集長を務める。平成２６年主宰。第３９回俳人協会新人賞受賞。

　句集：『遅日の岸』

　　　　　枯蟷螂人間なつかしく見る

　　　　　父の日の夕暮の木にのぼりけり

村上　護　（むらかみ　まもる）

　昭和１６年（１９４１）〜平成２５年（２０１３）７１歳。　愛媛県生れ。　東京在住。　文芸評論家

　人物評伝に優れた著作を残す。俳句に関する評論多数。※愛媛大学出身。　

句集：『其中つれづれ』　　著作：『放浪の俳人山頭火』『放哉評伝』『聖なる無頼　坂口安吾』ほか　編著：『明治俳句短冊集成（全三巻）』ほか

　　　　　ひと枡に一字一字や目借時

　　　　　四方見ゆる其中つれづれ日永かな

　　　　　ぽっとりと命にからむ椿かな

村越化石　（むらこし　かせき）

　大正１１年（１９２２）〜平成２６年（2014）９１歳。　静岡県生れ。群馬県在住。　　

　大野林火に師事。昭和９年ﾊﾝｾﾝ氏病にかかり草津の療養所に入る。４５年に両眼失明したが,俳句を作りつづけた。｢濱｣同人。第４回角川俳句賞・第１４回俳人協会賞・第１７回蛇笏賞・第４回読売文学賞・文学の森第8回山本健吉文学賞・第10回鬣ＴＡＴＥＧＡＭＩ俳句賞受賞。

　句集：『独眼』『山国抄』『端座』『筒鳥』『石と杖』『八十八夜』『螢袋』『八十路』『団扇』『籠枕』

　　　　　除夜の湯に肌触れあへり生くるべし

　　　　　生き堪へて七夕の文字太く書く

　　　　　闘うて鷹のゑぐりし深雪なり

　　　　　永き日のうしろへ道の伸びてをり

　　　　　山眠り火種のごとく妻が居り

　　　　　わが前をわが杖ゆきて春の道

　　　　　わが夜長森の夜長とつながれり

　　　　　老いてわれ生まれながらの柿を食ふ

村田治男（むらた　はるお）

　大正１１年（１９２２）〜平成２６年（２０１４）９３歳。　三重県生れ。　　

　戦前、矢田挿雲の「挿雲」で俳句を始める。戦後、外地より引き上げ「鳴子」「俳句新風」を経て昭和２７年「阿者良伎」に入会。谷禿象に師事。同３０年終刊。昭和３８年大原テルカズの紹介で五十嵐研三を知り同人誌「カルナ」を発刊。以後終生交友を続け共々三重県俳壇の結束と発展に尽力した。昭和２５年〜同３６年「層雲」同人。昭和３９年〜同４７年「青玄」同人。昭和４９年「海程」参加。

　句集：『フォッサ・マグナ』『村田治男句集』

　　　　ひでり田をひりひりと来しひとりかな

　　　　神話から流れでてぴかぴかの黄落季

　　　　ためらわずに来る前方の大紅葉

　　　　火の匂いする水滴の旅立ちや

　　　　鳥影を追うひとつふたつの修羅阿修羅

　　　　刃こぼれの月出ている裸馬に鱗はえ

　　　　一枚づつかさねて唄う白いい死後

室生幸太郎　（むろう　こうたろう）

　昭和8年（１９３３）　岡山県生れ。大阪府在住。　　｢暁｣代表

　日野草城に師事。昭和27年｢青玄｣入会、同人。｢青玄｣終刊により平成19年｢暁｣を創刊。昭和37年青玄賞・平成20年第63回現代俳句協会賞受賞。

　句集：『海辺』『夕景』『昭和』ほか

　　　　　　母をなおこの世にのこすぼたん雪

　　　　　　懲りない老人さくらにバンザイバンザイして

　　　　　　咲き満ちてさくら昭和を遠くする