俳人名鑑

 

 

塚本邦雄 (つかもと くにお)

 大正9年(1920)〜平成17年(2005)84歳. 滋賀県生れ。大阪府在住。 歌人。歌誌「玲瓏」主宰

 短歌は前川佐美雄に師事.前衛短歌の旗手として活躍した.第3回現代歌人協会賞・第2回第詩歌文学館賞・第23回迢空賞・第3回斎藤茂吉短歌文学賞・平成5年現代短歌大賞受賞。※旧制神崎商業出身。

 句集:『断弦のための七十句』…『流露集』 著作:『塚本邦雄全集全15巻』『茂吉秀歌』『定家百首』ほか 歌集:『水葬物語』『装飾楽句』『日本人霊歌』『詩歌變』『黄金律』『不變律』『魔王』ほか多数.

     良夜かな盥に紺の衣漬けて

     木賊刈るや雪のにほひの絶縁状

     曼珠沙華かなしみは縦横無尽

     うすべにの火の粉こぼれる花篝

     妻に言ひ寄る男かはゆし夜の鮠(はや)

     享年十二歳みどりの柿の花

     愛よりはまづほろびて雨の花筏

     花冷えや夢に琵琶湖の底見えて

 

津川絵理子 (つがわ えりこ)

 昭和43年(1968)兵庫県生れ。 「南風」

 鷲谷七菜子、山上樹実雄に師事。平成3年「南風」に入会。同人。副代表を経て平成26年から平成31年まで主宰歴任。南風賞・第30回俳人協会新人賞・第53回(平成19年)角川俳句賞・第1回星野立子賞・第4回田中裕明賞・第61回俳人協会賞受賞。

  

 句集:『和音』『はじまりの樹』『夜の水平線』

    見えさうな金木犀の香なりけり

    夕立の動物園に森の声

    つばくらや小さき髷の力士たち

    立春や腕より長きパンを買ふ

    星飛んで巨きな墓に王ひとり

 

月野ぽぽな (つきの ぽぽな)

 昭和40年(1965) 長野県生れ。ニューヨーク在住。 「海程」「豆の木」

 金子兜太に師事。平成16年「海程」入会。同人。平成17年「豆の木」に参加。豆の木賞・第50回海程賞・平成22年現代俳句新人賞・第63回角川俳句賞受賞。

     泣くために溜めておく息夕花野

     一匹の芋虫にぎやかにすすむ

     コスモスの風がギブスの子に届く

 

筑紫磐井 (つくし ばんせい)

 昭和25年(1950) 東京都生れ。 「豈」

 能村登四郎に師事。昭和56年「沖」同人。「豈」発行人。第2回俳人協会評論新人賞・第4回加藤郁乎賞・第9回加美俳句大賞スエーデン賞・正岡子規国際俳句EIJS特別賞・第27回俳人協会評論賞受賞。

 句集:『野干』『婆伽梵』『筑紫磐井集』  著作:『飯田竜太の彼方へ』『定型詩学の原理』『伝統の探求』ほか

     みちのくに戀ゆゑ細る瀧もがな

     八月の日干しの兵のよくならぶ

     もりソバのおつゆが足りぬ高濱家

     俳諧はほとんどことばすこし虚子

     阿部定にしぐれ花やぐ昭和かな

 

佃 悦夫 (つくだ えつお)

 昭和9年(1934) 岡山県生れ。神奈川県在住。  「海程」

 金子兜太に師事。昭和37年「海程」入会。同人。昭和47年度海程賞・第23回現代俳句協会賞受賞。

  句集:『空の祭』『身体私記』『赤ちゃん』ほか

       体温のみどりの祭流れ行く

       緑陰が童謡の終末翔ぶ白布

       青田かな大暗黒の畳かな

 

津沢マサ子 (つざわ まさこ)

 昭和2年(1927) 宮崎県生れ。東京都在住。 無所属

 昭和21年より句作。西東三鬼の「断崖」等を経て高柳重信に師事。旧「俳句研究」の50句競作に参加、代表句を残す。昭和56年まで「俳句評論」同人。第4回俳句評論賞・第24回現代俳句協会賞・第6回鬣TETEGAMI俳句賞受賞。

 句集:『楕円の昼』『空の季節』『風のトルソー』『Oへの伝言』『津沢マサ子俳句集成』『穹天譜』  

     くらくらと髪結う愛の日を前に

     晩夏の海は内股にこそ流れける

     灰色の象のかたちを身にゆかん

     荒涼と生まれたる日の金盥

     門を出てわれら花見に死ににゆく

     はんにちは母半日は涸れし川

     汝と我そのどちらかは春のゆめ

     永遠のいまどの辺り蝉時雨

 

辻 恵美子 (つじ えみこ)

 昭和23年(1948) 岐阜県生れ。 「梅檀」主宰

 沢木欣一に師事。昭和45年「風」入会。同55年同人。平成14年「梅檀」創刊主宰。昭和57年風賞・第33回角川俳句賞受賞。

    流燈ややさしき波の来て離す

    白鳥の胸菱の実刺さりゐし

    夏蒲団干して氷河の端に住む

    濡るるまで瀧に近づく女かな 

 

辻田克巳 (つじた かつみ)

 昭和6年(1931)〜令和4年(2022)91歳。 京都府生れ。 「幡」名誉主宰。

 山口誓子、秋元不死男に師事。昭和32年「天狼」,「氷海」入会。昭和35年「氷海」同人。昭和49年「天狼」同人。昭和53年「狩」創刊同人。平成2年「幡」創刊主宰。平成31年より名誉主宰。第9回氷海賞・天狼コロナ賞・第4回俳人協会新人賞・第1回紫式部市民文化賞・第51回俳人協会賞受賞。※京都大学文学部英文科出身。

 句集:『明眸』『オペ記』『頬杖』『辻田克巳句集』『昼寝』『焦螟』『稗史』『ナルキソス』『春のこゑ』『帰帆』

     昼寝などしてゐるうちに逃げられし

     栗の虫すまなささうに出で来る

     子供など朝から居らずこどもの日

     蝉時雨一分の狂ひなきノギス

     行く雁を仰ぐ六歳ともなれば

     ごきぶりにホイホイと毒盛る妻よ

 

対馬康子 (つしま やすこ) 

 昭和28年(1953) 香川県生れ。東京都在住。  「天為」・「麦」会長

 中島斌雄に師事。昭和48年「麦」入会。同人。平成29年「麦」会長に就任。平成2年有馬朗人の「天為」創刊に参画、永く編集長を務めた。平成29年最高顧問。夫は俳人の西村我尼吾。麦作家賞・文部科学大臣表彰・第10回桂信子賞受賞。

 句集:『愛国』『純情』『対馬康子集』『天之』『竟鳴』    

      胎動は氷河きらめくときにあり

      初雪は生れなかった子のにおい

      手袋の五指恍惚と広げおく

      恋人も枯木も抱いて揺さぶりぬ

      月光やあの手も燃えてしまいけり

      蝶探す辞書の手垢の濃きところ

      いつもかすかな鳥のかたちをして氷る

 

辻 美奈子(つじ みなこ)

 昭和40年(1965) 東京都生れ。 「沖」

 能村登四郎、林翔に師事。昭和58年「沖」入会。同人。沖新人賞・沖珊瑚賞・第28回俳人協会新人賞受賞。

 句集:『魚になる夢』『真咲』『天空の鏡』

     櫻満開おのが身に皮膚いちまい

     旧姓といふ空蝉に似たるもの

     泣くときにつかふ腹筋豊の秋

     竹皮を脱ぐやこどもはいつも旬

 

辻 桃子 (つじ ももこ)

 昭和20年(1945) 神奈川県生れ。青森県在住。  「童子」主宰。

 楠本憲吉、藤田湘子に師事。波多野爽波に私淑。昭和38年「野の会」創刊同人。昭和45年「俳句評論」に入会。54年「鷹」入会、のち同人。「鷹」同人を辞し,昭和62年「童子」創刊。第19回鷹俳句賞・第5回加藤郁乎賞受賞。

 句集:『桃』『ひるがほ』『花』『童子』『しほからとんぼ』『ねむ』『ゑのころ』『灯心蜻蛉』『雪童子』『饑童子』『龍宮』『馬っ子市』  著作:『桃子流虚子の読み方』ほか

     虚子の忌の大浴場に泳ぐなり

     雪の夜の絵巻の先をせかせたる

     蒲団敷く地獄極楽絵図の前

     つながれて秋のボートとなりにけり

     ぬくまれば踊る豆腐や夕霧忌

     母逝きて薔薇のアーチの遺りけり

 

津高里永子(つたか りえこ)

 昭和31年(1956) 兵庫県生れ。 「小熊座」・「墨(BOKU)」代表

 鍵和田秞子、佐藤鬼房、高野ムツオに師事。平成6年「未来図」入会のち同人。平成16年退会。平成8年「小熊座」入会、同人。平成9年未来図新人賞受賞。

 句集:『地球の日』『寸法直し』 著作:『俳句の気持ち』

   恋猫の脚ともかくも拭いてやろ

   たんぽぽの絮よわが夢何だつけ

   愛欲や手折りて氷柱手を滑る

 

津田清子 (つだ きよこ)

 大正9年(1920)〜平成27年(2015)94歳。 奈良県生れ。 

 橋本多佳子,山口誓子に師事。「天狼」,「七曜」同人。昭和46年「沙羅」創刊主宰、のち「圭」と改称し代表となる。平成24年6月「圭」終刊。俳人協会顧問。第2回天狼賞・第34回蛇笏賞受賞。※旧制奈良女子師範(現・奈良教育大学)出身。

 句集:『礼拝』『二人称』『縦走』『葛ごろも』『七重』『無方』『津田清子句集』

     虹二重神も恋愛したまへり

     狭る休みせし吾をげんげ田に許す

     刹那刹那に生く焚火には両手出し

     降誕祭讃へて神をニ人称

     栗甘くわれら土蜘蛛族の裔

     原罪の寒の夕焼法華尼寺

     無方無時無距離砂漠の夜が明けて

 

津根元 潮 (つねもと うしお)

 大正14年(1925)〜平成18年(2006)81歳。 大阪府生れ。東京都在住。  「青玄」・「潮」代表

 昭和18年から句作。日野草城に師事。「青玄」同人。平成13年「潮」創刊。第48回現代俳句協会賞受賞。

 句集:『見色』『有余』『両忘』『潮』ほか

      あるときは蟻のかたちで闇に入る

      前の世のその前の世は沙羅双樹

      少年を冬だと思う空がある

      春愁に骨といおうものあるらしき

      詩を書いていのち知る夜のはたたがみ

 

 

坪内稔典 (つぼうち ねんてん)

 昭和19年(1944) 愛媛県生れ。大阪府在住。 「船団の会」代表

 高校時代に俳句を始める.伊丹三樹彦に師事。「青玄」に投句。大学時代,全国学生俳句連盟を結成.同人誌「日時計」「黄金海岸」を経て「現代俳句」を編集。昭和60年個人誌「船団」発行。後「船団の会」に。平成16年京都市文化功労者受賞。

 句集:『朝の岸』『わが町』『落花落日』『猫の木』『百年の家』『人麻呂の手紙』『坪内稔典句集(全)』『ぽぽのあたり』『水のかたまり』『ヤツとオレ』  著作:『俳句のユーモア』『子規山脈』『子規のココア・漱石のカステラ』『柿喰う子規の俳句作法』ほか

      水中の河馬が燃えます牡丹雪

      三月の甘納豆のうふふふふ

      たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ

      春の風ルンルンけんけんあんぽんたん

 

    




 

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